作業療法士による精神科訪問看護②

前回の記事では、作業療法士が精神科訪問看護に関わることで得られるメリットについてご紹介しました。今回は、実際の訪問の中で感じた作業療法士ならではの関わりや、利用者さんの変化についてお話ししたいと思います。
訪問の際に大切にしているのは、それぞれの利用者さんと無理のない小さな目標を一緒に見つけ、少しずつ自信を取り戻していくことです。抑うつ傾向が強く、外出が難しかった利用者さんが玄関の前まで出てみようと一歩を踏み出せた日や、家事が負担だった利用者さんが、せめて洗濯物を畳むことだけはやってみようと行動に移せた時など、どれも小さな出来事ですが、その一歩が生活の中での大きな変化を生み出したり、回復を見守ってきた家族の喜びなどにもつながります。
作業療法士にとって「作業」は単なるリハビリではなく、心を整える時間でもあります。何事も億劫になり趣味を失いかけていた利用者さんが、昔好きだった編み物をしたり、三線を弾く、絵を描くなどの活動を通じて、自分らしさを取り戻し笑顔が見られるようになる、精神面の安定につながるなど、「やってみたい」「またやってみよう」と思える気持ちが芽生えることこそ、作業療法士が大切にしている心の回復の第一歩であり、そのような変化の瞬間に立ち会えることが、私たちのやりがいでもあります。
作業療法士の関わりは、決して派手なものではありませんが、日々の生活にそっと寄り添い、利用者さんの中に小さな変化を生み出すきっかけをつくる役割があります。その積み重ねがやがて「その人らしい暮らし」につながっていくと、私たちは信じています。
看護師やソーシャルワーカーなどの多職種と協力しながら支援を行うことで、利用者さんが地域の中で自分らしく暮らしていけるよう、チーム全体で工夫し、ひとりひとりのペースを大切にした支援を続けてまいります。
那覇沖縄エリア中部ステーション
東海林 謙太